【水戸市でPFAS検出】暫定目標値の3.8倍を記録。飲用井戸の安全性と私たちが今すべき対策
2026年2月12日、茨城県水戸市は、大場町にある飲用井戸1カ所から国の暫定目標値を大幅に上回る有機フッ素化合物(PFAS)が検出されたと発表しました。
検出された数値は1リットル当たり190ナノグラム。これは国の暫定目標値(50ng/L)の3.8倍に相当します。
「自分の家の井戸は大丈夫だろうか?」
「以前の検査では異常なかったけれど、改めて検査すべき?」と不安を感じている方も多いはずです。
この記事では、今回の水戸市のニュースの詳細から、PFASの正体、そして井戸水利用者が取るべき具体的なアクションについて、解説します。

水戸市大場町でのPFAS検出の概要
まずは、今回発表された事実関係を整理しましょう。
検出場所:水戸市大場町地内の飲用井戸(1カ所)
検出値:190ng/L(PFOSおよびPFOAの合算値)
基準値:暫定目標値 50ng/L(今回の検出値はその3.8倍)
市の対応:
所有者へ飲用中止を指導(上水道への切り替えで対応済)
当該井戸から半径約500メートル以内にある他の飲用井戸の追加調査を実施予定
周辺住民への個別訪問による周知と飲用指導
水戸市内では、2025年3月にも五軒町の井戸から90ng/LのPFASが検出されており、地下水汚染への関心が高まっています。
そもそもPFAS、PFOS、PFOAとは何なのか?
最近ニュースで頻繁に耳にするようになりましたが、これらは一体どのような物質なのでしょうか。
PFAS(ピーファス)とは
PFASは「ペルフルオロアルキル化合物およびポリフルオロアルキル化合物」の総称で、1万種類以上の物質が含まれます。水や油をはじき、熱に強く、薬品にも強いという非常に便利な性質を持っているため、1950年代から世界中で幅広い用途に使われてきました。
PFOS(ピーフォス)とPFOA(ピーフォア)
PFASの中でも、特に代表的なのがPFOSとPFOAです。
PFOS:半導体用レジスト、金属メッキ、泡消火薬剤などに使用。
PFOA:フライパンのテフロン加工(ふっ素樹脂製造の助剤)、撥水スプレー、繊維の防汚剤などに使用。
これらは自然界でほとんど分解されず、動植物の体内に蓄積されやすいため、「永遠の化学物質(Forever Chemicals)」と呼ばれています。近年、発がん性や免疫系への影響などの健康リスクが指摘され、国際的に製造・使用が厳しく制限されています。
なぜ「今」検出されるようになったのか?
「昔から使われていたのなら、なぜ今になって騒がれているの?」という疑問を持つ方もいるでしょう。その理由は主に2つあります。
測定技術の向上:かつては測定できなかったほど微量な濃度(ナノグラム単位)まで正確に測れるようになりました。
調査の本格化:健康への影響が懸念され始めたことを受け、国や自治体が2020年頃から本格的なモニタリング調査を開始したため、これまで「見えていなかったもの」が可視化されるようになったのです。
つまり、最近になって急に発生した汚染というよりは、過去に蓄積された物質が、調査によって今見つかっているという側面が強いといえます。
PFAS汚染が起こりやすい条件とは?
PFASによる地下水汚染には、いくつかの傾向が見られます。
施設との位置関係:泡消火剤を多用する空港や自衛隊基地、消防署、あるいはPFASを取り扱っていた化学工場やメッキ工場の周辺で高濃度で検出される事例が多いです。
河川との関係:工場の排水が流れ込んだ河川の周辺では、伏流水(地下水)も汚染される可能性があります。
畑や山の近く:農薬に含まれていたケースや、不適切な廃棄物の埋め立てが原因となることもありますが、住宅街の井戸で突如見つかるケースもあり、一概に「ここなら安全」とは言い切れません。
井戸の深さ(浅井戸 vs 深井戸):
浅井戸:地表に近い地下水を利用するため、雨水や地表からの汚染物質の影響をダイレクトに受けやすいです。
深井戸:比較的安全とされますが、汚染が深層まで到達している場合や、井戸の構造(ケーシングの不備など)によって浅層の汚染水が混入する場合もあります。
以前の検査で「飲用可」だった場合も再検査が必要か?
ここが非常に重要なポイントです。
「数年前に保健所の水質検査を受けて『適合(飲用可)』だったから安心」とは限りません。
なぜなら、一般的な井戸水の水質検査(11項目や13項目など)には、PFAS(PFOS・PFOA)は含まれていないからです。
従来の検査とPFAS検査の違い
一般検査項目:大腸菌、一般細菌、硝酸態窒素、鉄、マンガン、pH値など(食中毒や急性疾患を防ぐための項目が中心)。
PFAS検査:特殊な分析機器が必要なオプション項目。
茨城県の調査では、県内の飲用井戸の約40%が一般項目(細菌や窒素化合物)で不適合となっていますが、これに合格していてもPFASが含まれている可能性は排除できません。
特に今回の水戸市大場町のように、近隣で超過が確認された地域の井戸水を利用している場合は、再検査(PFAS特化の検査)を強く推奨します。
検査費用はいくらかかる?どこに頼めばいい?
PFASの検査は、一般的な水質検査よりも高額になる傾向があります。
検査費用の目安:約30,000円 ~ 50,000円前後(PFOS・PFOAのセット料金)
依頼先:茨城県の「知事の登録を受けている水質検査機関」へ依頼してください。
水戸市の公式ホームページや、茨城県の保健福祉部生活衛生課のサイトに、登録機関のリストが掲載されています。
注意点:検査機関によって料金やサンプルの採取方法(自分で容器に汲んで送る、または業者が自宅に来る)が異なります。まずは電話で見積もりを取るのがスムーズです。
安全な水への切り替えと、自治体の支援制度
もし、自分の家の井戸から基準値を超えるPFASが見つかった場合、どうすればよいでしょうか。
1. 飲用の中止
市町村の指導に従い、飲用や炊事(料理)への使用を直ちに中止してください。手洗いやお風呂、洗濯などの生活用水としての使用は、皮膚からの吸収が極めて少ないため、基本的には問題ないとされています。
2. 水道への切り替え
最も確実な対策は、管理された上水道へ加入することです。県内の上水道はPFAS検査を徹底しており、基準値をクリアした安全な水が供給されています。
3. 加入金の減免制度
茨城県や各市町村では、井戸水から水道水への転換を促進するため、水道加入金の減免や助成を行っている場合があります。
今後の展望とアドバイス
PFAS問題は現在進行形で調査が進んでいる分野です。
今後、国によって暫定目標値がさらに厳しく見直される可能性や、新たな規制物質が追加される可能性もあります。
井戸水は自然の恵みですが、地下水は常に変化しています。
「これまで大丈夫だったから」と過信せず、以下の習慣を心がけましょう。
1年に1回の定期的な水質検査(一般項目)
近隣の汚染ニュースに敏感になること
不安がある場合は、早めに専門機関や市役所の環境部門へ相談すること
今回のPFAS検出を受け、「昔は気にしていなかったのに、なぜ今になって?」と疑問に思う方も多いでしょう。これはかつて社会問題となったダイオキシンの経緯と非常によく似ています。
科学の進歩が「見えない汚染」を可視化する
かつては100万分の1(ppm)単位でしか測れなかった分析技術が、現在は10億分の1(ng/L)や、さらに微細な単位まで正確に測定できるようになりました。
いわば、これまでは「目が粗すぎて素通りしていた網」が、科学の進歩によって「極めて細かい網」にアップデートされたのです。その結果、以前の検査では「異常なし」とされていた水から、微量な汚染が浮き彫りになるケースが増えています。
第2、第3のPFASは現れるのか?
PFAS以外にも、私たちの身の回りにはまだリスクが十分に解明されていない物質が存在します。
プラスチック添加剤:製品を柔らかくする成分などの内分泌攪乱作用(環境ホルモン)。
マイクロプラスチック:体内への蓄積や、他の有害物質を吸着して運ぶリスク。
代替物質の連鎖:ある物質が規制されると、似た性質の代替品が使われますが、後にそれも同様の残留性を持つことが判明する、という追いかけっこの状況が続いています。
「予防原則」で自らを守る時代へ
「科学的に100%危険と証明されるまで待つ」のではなく、「疑わしきは対策を講じる」という予防原則が世界の主流となっています。
特に井戸水を利用されている方は、「数年前の検査で飲用可だったから」と過信せず、最新の科学的知見に基づいた項目(PFASなど)を含めた定期的なチェックを行うことが、家族の健康を守る最も確実な手段となります。
最後に、こうした環境問題についてはSNSなどで根拠のない風説が流布されることもありますが、感情的な情報に惑わされることなく、国や自治体が発信する公的なデータや科学的根拠に基づいた正しい情報を見極め、冷静に対応することが大切です。

信頼のおける出典・参照元
水戸市公式ホームページ:水戸市内の地下水におけるPFOS・PFOAの調査結果について
茨城県公式ホームページ:PFOS・PFOAについて(県内水道水の安全性)
環境省:PFOS、PFOAに関するQ&A集・対応手引き
厚生労働省:水道統計および水質基準逐次改正に関する資料
茨城新聞クロスアイ:水戸でPFAS検出 暫定目標値の3.8倍 大場町の飲用井戸